原発性腋窩多汗症とは、汗の成分が促される病気や状況がないみもかかわらず、腋窩(脇の下)に多くの汗をかく病気のことです。日本人の約数%が発症しているとされており、決して珍しい病期ではありません。暖かさや精神的負荷の有無に関係なく腋窩に大量の汗をかく疾患で、頻繁な衣服交換やシャワーが必要になるなど日常生活に支障がでたり、汗じみや臭いが気になり精神的な苦痛を受ける方が多いとされています。
診断基準は原発性局所多汗症診療ガイドラインより多汗が6か月以上続いていることに加えて
・発症が25歳以下である
・左右対称の発汗が見られる
・睡眠中は発汗が止まっている。
・1回/週以上の多汗のエピソードがある
・家族歴が見られる
・それらにより日常生活に支障をきたす
上記の6項目のうち2項目以上に当てはまる場合を原発性腋窩多汗症としています。
現在では抗コリン薬外用剤(エクロックゲル、ラピフォートワイプ)やボツリヌス毒素製剤の局所注射など、原発性多汗症に対する様々な治療が保険下で行えるようになりました。副作用による負担も軽減され長期的に治療継続も可能で多汗によって損なわれているに日常生活の改善が期待できます。
重症例には、A型ボツリヌス毒素の皮下投与が選択され、原発性腋窩多汗症のボトックス療法には健康保険が適応されます。
ボトックスはボツリヌス菌が作る神経毒素でA型が最も安定して毒性が強いとされています。 末梢の神経終末内でアセチルコリン放出抑制により神経伝達を阻害します。エクリン汗腺は主にコリン作動性神経により調節されていることから、コリン作動性神経および汗腺の接合部において、アセチルコリン放出抑制により神経伝達を阻害して発汗を抑制すると考えられています。時間が経過すると神経終末の機能が回復、情報伝達は数か月後には再開通して発汗抑制作用が減少します。
投与方法
腋窩の皮内に直接注射を行います。発汗部位を確認して1~2cm間隔で10~15か所に注射、皮内に投与します。
効果・副作用 原発性腋窩多汗症の患者さんの96.2%において発汗量を50%以上減少するとの報告があります。 効果持続期間の中央値は273日 144例中3例で発汗、四肢痛の副作用が見られたとの報告があります。
効果持続期間 ボトックス療法による汗を抑える効果の持続する期間は通常4~9か月となっております。症状が再出現した場合には再度の投与を検討します。